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カンボジア。
世界のアパレル生産を支えるこの国では、日々大量の衣類が縫製されている。その一方で、縫製の現場からは“裁断端材”と呼ばれる大量の繊維廃材が副産物として生まれ、行き場を失ったまま焼却・埋立処分されるのが常だった。
しかし今、この繊維端材に新たな価値を与える試みが静かに始まっている。
縫製工場で発生した端材をカンボジアから日本へ輸送し、日本国内で選別・粉砕・成形。建材や家具用の再生ボードとして再資源化するというプロジェクトだ。加工されたボードは、強度・意匠性に優れ、家具や様々なプロダクト、さらには空間デザインの素材としても多彩な可能性を秘めている。
このプロジェクトの本質は、単なる“リサイクル”ではない。
将来的には、アジア全域で発生する繊維端材を日本に集約し、日本を繊維資源循環のハブ(中核生産地)とする構想が描かれている。高い加工技術と品質管理、そして設計力を備えた日本だからこそ、アジアの廃材を高付加価値な素材へと再生しうる拠点として機能できると考えている。
従来の資源循環は“現地完結型”が多かったが、この取り組みが提示するのは広域循環モデルだ。日本で高度に再資源化された繊維素材を、再び国内外の市場に供給していく。つまり、廃材を輸送して終わるのではなく、価値あるプロダクトとして再び流通させる“循環の完成”までを担うのである。
現在はあくまで試験的なフェーズにあるが、すでにカンボジアの縫製企業との協働が進み、今後はベトナム、インドネシア、韓国などアジア各国との連携も視野に入れている。
“衣類の余り”が、循環の核となる未来。
その実現に向けた起点が、今ここ、日本で始動している。
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資源循環型 繊維リサイクル PANECO®
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