東洋経済ONLINEの2024年6月9日配信の服飾史家:中野香織さんの記事からこれからのサステナブルを考察してみたいと思います、
「カルチャー帝国」築く高級ブランドのしたたかさ ルイ・ヴィトンの「衝撃人事」が示す異変とは? | 東洋経済Style&Life | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
「カルチャー帝国」築く高級ブランドのしたたかさルイ・ヴィトンの「衝撃人事」が示す異変とは?
また戦争や自然災害で苦しむ人が増えている今、話題先行で熱狂をあおるコラボ製品やブランドロゴを誇示する「ロゴマニア」と呼ばれるスタイルはもはや「鈍感」と見なされ、息をひそめた。
そんなムードにサステナビリティーという価値観が加わり、上質で控えめな服に脚光が当たるようになった。クワイエット・ラグジュアリーが注目されるようになったのだ。
品質も価格も高い「知る人ぞ知る」ブランド
コロナ禍前の「ロゴ崇拝」の喧騒をいったんリセットしたこの潮流は、2022年頃から活発に話題に上り、2023年秋冬コレクションを席巻した。
例えば、高いテーラリング(仕立て)技術を上質な素材に落としこんだウェアを展開するザ・ロウや、職人技術を尊重し、気負わぬ贅沢感を漂わせるブルネロ・クチネリといった、品質も価格も高い「知る人ぞ知る」ブランドが注目を浴びた。
とはいえ、ブランドロゴをひけらかさないクワイエット・ラグジュアリーは本来、一過性のトレンドというわけではない。
保守富裕層が大衆からの反感を避けて目立たないようにする、ステルスウェルス(隠れた豊かさ)と呼ばれて連綿と継承されているスタイルでもある。このテイストは、今後も続いていくだろう。
▻▻▻考察
一時期の「サステナブル」の喧騒もいったんリセットされた感がある。これからは企業も消費者もサステナブルをひけらかさないクワイエット・サステナブルが定着するであろう。(日本ではかなりの時間を要するかもしれないが…)
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ファッションブランドは、「カルチャー帝国」の構築へ
一方、新しいデザインの服や小物といった「モノそのもの」や目立つロゴが、以前ほどの魅力を持たなくなった状況を受けて、独自の「カルチャー帝国」を築くことでアイデンティティーを確立する方向を鮮明に打ち出すブランドも出てきた。ルイ・ヴィトン メンズが筆頭格といえよう。
2023年2月、ルイ・ヴィトン メンズのクリエイティブ・ディレクターに就任したのは、ファレル・ウィリアムスだった。爆発的ヒットとなった2013年の彼の曲「ハッピー」を記憶されている方も少なくないだろう。
音楽シーンで名をはせてきたとはいえ、ファッションの現場の経験が豊富というわけでもなかったため、業界内では衝撃が走った人事だった。
ファレルのデビューを飾った2024年春夏のショーは、パリ最古の橋であるパリのポン・ヌフを舞台に開催された。
セーヌ川を封鎖してポン・ヌフの端から端までをランウェイにするという壮大な会場に、ファレルの友人であるセレブリティが世界中から駆けつけ、「ハッピー」なコレクションは大成功をおさめた。
彼の役割は、デザイナー、プロデューサーだけでなく、ブランドのアンバサダーにしてセレブコミュニティーとブランドをつなぐ広報官でもあった。ルイ・ヴィトンは、ファレルを中心とするポップカルチャー・セレブリティー文化圏をがっちりと取り込んだことを示した。
親会社LVMHは世界最大のラグジュアリー・コングロマリットで、会長のベルナール・アルノーはイーロン・マスクと世界一、二の地位を争う富豪だ。
1980年代には不動産業に携わっていたアルノーは、40年かけて70を超えるラグジュアリー・ブランドを傘下に収め、アート、ストリート、テクノロジーの文化圏も取り込んできた。
アルノーは不動産業の知見を生かし、パリやニューヨークの一等地の不動産を買い続けてブランドの店舗を設置。傘下ブランドの新しい店舗が増え、ショーウィンドウやPRを通して存在感を増している。
▻▻▻考察
私たちは「リサイクル」や「素材開発」の専門家ではない。なので既成概念にとらわれることなく「デザイン」や「ものづくり」の視点から革新的なアプローチを可能にしている。PANECO®が構築しようとしている本質はリサイクルの技術や仕組みではなく「文化」なのである。
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K-Popの巨大なファンダムを取り込む
「文化圏」を背負うアイコンとの連携という意味では、ファンダム(熱狂的なファンのコミュニティー)をもつタレントをブランドアンバサダーにするという戦略も定着した。
とくにハイブランドとK-Popスターとの結びつきは顕著で、BLACKPINKのジスはディオール、ロゼはサンローラン、リサはセリーヌ、ジェニーはシャネルのアンバサダーを務める。そうすることで、ブランド側はタレントの背後に控える巨大なファンダムにリーチできるのだ。
最近のパリやミラノのコレクション会場の外には、ファッションブランドのファンというよりむしろ、アンバサダーとなったタレントのファンが詰めかける。彼らがSNSに上げる写真を通して、タレントが着用するブランドの商品イメージも拡散されるのだ。
エンタメ業界へのアプローチはそれだけにとどまらない。フランスのラグジュアリー・コングロマリットであるケリングは独自のエンターテインメント・メディアを持とうとしている。
ケリングは傘下にグッチ、バレンシアガ、アレキサンダー・マックイーン、ボッテガ・ヴェネタなど高級ファッションブランドを持つが、その中の1つ、サンローランが独自の映画プロダクションを設立した。ファッションブランドが本格的な映画制作を行うのは初めてのこと。
このようにファッションブランドは今、アート、テクノロジー、ポップカルチャー、エンターテインメント、メディアと融合し、世界のあり方に大きな影響を及ぼす文化的ブランドを目指し、成長を続けている。
▻▻▻考察
PANECO®は単なる「リサイクル企業」や「素材開発企業」とは一線を画し「PANECO® Art Project」「伝統工芸とのコラボレーション」「様々な分野のクリエーターとのコラボレーション」を通して文化的なブランドを目指している。
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「文化」を飲み込み、生み出す巨大資本
巨大資本が創出するそのような文化に抵抗するファッションブランドも少なくない。
イタリアのカジュアルブランド、ディーゼルは世界初となるコミュニティーハブ「ディーゼル・スタジオ」を東京・銀座に期間限定で作り、東京のローカルなカルチャーを発信。
また、2024年秋冬ショーでは会場の巨大モニターに、1000人のディーゼルファンを映し出した。各自の個性を生かしたコーディネートを披露する光景は反響を呼んだ。ローカルで多様な個性の集積がディーゼルのコミュニティーを創り、ブランド独自の文化を築くことを目指している。
もともとファッションはカルチャーと不可分であったとはいえ、現在、ファッションを生み出すプレイヤー側の文化的な影響力は、資本の力を得てますます大きくなっている。こうした力が、私たちの価値観にどのような影響を与えているのかを自覚しておきたい。
そのうえで、私たちはどうありたいのか、どんなコミュニティーを創り、どのような文化を育てていきたいのかを、今こそ「静かに」考えたい。
▻▻▻考察
PANECO®はどうありたいのか、どんなコミュニティーを創り、どのような文化を育てていきたいのかを、今こそ「静かに」考えたい。
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資源循環型繊維リサイクル「PANECO®」